第百二十一章

ストレッチャーが病院の廊下を猛スピードで進み、車輪がタイルと擦れて甲高い音を立てる。

葵はその後ろをふらつきながら追いかけた。胃の激痛で、まともに腰を伸ばすことすらできない。

救急救命室のドアの上で点灯する赤いランプが、目を刺すように眩しい。まるで決して越えられない生と死の境界線のようだ。

葵は冷たい壁に寄りかかった。両手の震えが止まらず、掌は冷や汗でびっしょり濡れている。固く閉ざされたドアを見つめる彼女の脳裏には、和也が転落する直前に残した、あの憑き物が落ちたような呟きが響き続けていた。

彼は「これでやっと返せた」と言った。だが、こんな形での清算など、彼女は少しも望んでいなかった。...

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